
「人は自分が作り出したものの真の力を知らないまま、現実への応用を具体化してしまった・・・東海村なり福島なりで炉心溶解規模の事故が起こったら、日本の社会はあまりにも重大な損傷を被る」 1990年 池澤夏樹
2011年3月11日、東日本を襲った大規模地震と津波による大災害は、20年前に自ら「東海村」の見学をし、原発とその関係者の矛盾を論じたあの日の池澤夏樹の恐れを現実のものとした。
終わることのない核問題、民族や種の消滅、エイズというレトロウィルス、洪水、沙漠化、南北問題―。
芥川賞受賞作家・池澤夏樹は、そうした”終末”の可能性を、縦横無尽の知で、鋭く、そして深く考察し、この終末論を書き上げた。まさに今読まれるべき、これからの日本を生き抜く現代人のための必読書である。
このたび電子書籍として復刊した本書では、陸前高田市出身の写真家畠山直哉による、“ある営みの終わり”を映し出す作品が加えられた。さらには撮り下ろしの著者本人のインタビュー映像も収録するなど、新世紀の『楽しい終末』にふさわしいコンテンツとなっている。
【著者インタビューより】
今回、この大きな地震と津波がきて、しかもその後で福島の原発がああいう事態になった。それでぼくは慌てて振り返ってみて、原発のことは『楽しい終末』で書いたな、と思って、もういっぺん引っ張り出して読んでみたんですね。
あの時僕は東海村の原子力発電所を見学に行っています。その時に見て書いたことを今読んでみると、結局、あまりにも当たっていた。これは当たって嬉しいことではないんですよ。こんな悲惨なことに、こんなにひどいことになってから「だから言ったじゃないか」と僕が威張って言っても始まらない。それはつまり、大変悲しいことです。
しかしあそこで考えてたことがこんなに当たってしまうと、では、あの本に書いた他のことはどうなんだろうといろいろ気になってくる。問題はたくさんあるんです。
だからこそ、改めてこの本を世の中に提出して皆さんに読んでもらおうと考えた次第です。
【著者プロフィール】
池澤夏樹
作家。1945年北海道帯広市に生まれる。小学校から後は東京育ち。
以後、3年をギリシャで、10年を沖縄で、5年をフランスで過ごして、今は札幌在住。
1987年に『スティル・ライフ』で芥川賞を受賞。その後の作品に『マシアス・ギリの失脚』、『花を運ぶ妹』、『静かな大地』など。
2011年3月11日の東北大震災に関わる著作として、18年前に原発の危険についても論じた本書『楽しい終末』のほかに、自然と人間の関係を扱った『母なる自然のおっぱい』、ボランティア活動を書いた小説『タマリンドの木』、天災をテーマとした『真昼のプリニウス』、風力発電を書いた『すばらしい新世界』ならびにその続篇の『光の指で触れよ』がある。更に、震災の全体像を描く試みとして長篇エッセー『春を恨んだりはしない』を震災の半年後に刊行。
【写真】
畠山直哉
1958年 岩手県陸前高田市生まれ。
1984年 筑波大学大学院芸術研究科修士課程修了。
1997年 第22回木村伊兵衛写真賞。(写真展「都市のマケット」、写真集「LIME WORKS」)
2000年 第16回東川賞国内作家賞。
2001年 第42回毎日芸術賞受賞。(写真集「Underground」)
2001年 第49回ヴェニス・ビエンナーレ日本館参加。
2003年 日本写真協会年度賞受賞。
国内外で展覧会多数。
■対象端末
iPad/iPhone/iPod touch (※iOS4以上に対応)





